「偽」が、今年の世相を表す漢字に選ばれたそうだけど、実際に揮ごうした清水寺の貫主さんも、悲憤にたえないと怒るように語っていた。
偽装にもいろいろあって、温泉偽装や耐震偽装、請負偽装なんてのもあったねよね。
食品の期限表示偽装も多かったけど、食品そのものを偽装するのも大流行らしい。
『鯛という名のマンボウ アナゴという名のウミヘビ』(晋遊舎ブラック新書・吾妻博勝著)を読んでいたら、気持ちが悪くなって吐き気を覚えた。サブタイトルは「食品偽装の最前線--魚・肉・野菜・米」。全編、食品偽装の実態が体をはった取材で貫かれている。
タイトルが示すように、多くの低料金の回転寿司店では、鯛といえばマンボウが使われていることが多く、なんと、アナゴにいたってはウミヘビ!(ぎゃぁ!)
うわさは聞いていた。そうしないと回転円寿司なんて採算が合わないと。(回転寿司の全部が偽装しているわけではない)
チリ産のウミヘビを「マアナゴ」と称して、使っているそうだ。実態は和名が「マルアナゴ」で、ウミヘビの一種らしい。この和名が話をややこしくさせている。ある著名な魚類学者がこのウミヘビを「アルアナゴ」と命名して以来、水産業界では堂々と、ウミヘビがアナゴとして流通するようになったという。
アナゴ一本握り、アナゴ一本天ぷらなどのメニューを目にするが、あれもウミヘビ?
アメリカナマズも偽装の王様格で、鯛やヒラメに変身させられている。
腹が立つのは、業者の利益を得るためとしか思えない偽装の手口もだが、私たち消費者自身が信じさせられてしまっていることだ。人間の舌のはかなさ、貧しさ、いやしさ。
回転寿司が広がったおかげて、いままであまり口にしなかった魚類を手軽に食べられるようになったが、そのほとんどが、世界で誰も今まで食べなかったようなグロテスクな「もどき」であったなんて。
魚のほか、肉・野菜・米に至るまで、著者の吾妻さんはこれでもか、これでもかというくらい丹念に取材している。
でも、これを読んで、私は何も食べる気がしなくなった。おいしくなくても、素性のわかる安全な食べ物を食べたいと思った。
日本人の、食にもいえる、ブランド志向を背景に、食品偽装は大手を振ってまかり通っている。
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