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おお、こわ

電車が駅の止まるとき、からだが持ち上げられるようになって揺れた。背伸びしながら、やっとの思いでつり革につかまっていると、ドアの付近から大きな声が……。

「気持ち悪いってかぁ」
「こっちこそ、気持ち悪いわぁ」
「……」
「満員電車は、押し合いへし合いで、混雑するんや」
「それがいやったら乗らんとき。わかったか、フン」

朝から、自分が怒声を浴びているようで、全身が固まってしまう。
おお、怖~い。
かかわらんとこ。

怒声の主は電車を降り、ハイヒールを響かせてエスかレターの人混みに消えていった。
(もちろん、怒っていたのは女性、怒られていたのは男性です)

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精神の生理

『文章読本』(丸谷才一・中公文庫)を読み返していたら、吉行淳之介の『戦中少数派の発言』が引用されているのに気がついた。
吉行は、そこに昭和16年12月8日のことを記している。12月8日といえば太平洋戦争の開戦の日だ。吉行は中学5年生だった(旧制中学だから別に落第していたわけではない)。

事務室のラウド・スピーカーから流れてくる真珠湾の大戦果に、級友たちの大多数は歓声をあげ、教室を飛び出していった。吉行は一人教室に残って、孤独感と、同時に孤塁を守るという自負の気持ちを味わっていたという。
<中学生の私を暗然とさせ、多くの中学生に歓声をあげさせたものは、思想と名づけるにたるものとはおもわれない。それは、生理(遺伝と環境によって決定されているその時の心の肌の具合といったものともいえよう)、と私はおもう>と書いている。

その気持ちが、なんとなくわかる……なんて不遜ないい方だが、私が二十歳前後で好んで読んでいたのは吉行淳之介だったことを思い出した。
<その当時、私が書物を乱読したのは、自分と同じ生理の属する人間を東西の作家の中に見いだそうとしたためと言ってもよいくらいである>と吉行は書いているが、私が乱読するのも、じつは、自分と同じ生理の人を見つけるためなのだと思う。

見つけてどうする。安心するのである。こんな私でも、生きていけると思うのである。
そういう意味で見つけた人が3人の作家がいる。
富岡多恵子、高橋たか子、三枝和子……私と似たような精神の生理をもつ人たち、と勝手に思い込んでいる。

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きょうから出直し

近ごろ、書くことがますます苦しくなって、何も書かない日が続いていた。
3年間、ほとんど休まず「猫日記」を書いていたのがウソみたい。何かにとりつかれていたのだろうか。今では考えられないくらい、まじめで勤勉だった。
猫に、漫才させるのは面白かったなぁ。

とりあえず、読んだ本のことでも記していこう。
最近は多重債務に関する本を読みまくっている。そう、借金づけになった人を書いた本である。日本のものもたくさん読んだが、いちばん面白かったのは『借りまくる人々』。著者はアメリカ人である。カードづけにさせられるアメリカ社会の実態が取材をもとに暴かれていて、ドキュメンタリー風にうまくまとめられていた。

日本でもサラ金(消費者金融ではなく、あえてサラ金と呼ぶ)の高金利が多重債務者を再生産している。返済のために他のサラ金で借り、その返済のために、また他のサラ金で借りるという悪循環。金利29.2%で、元金がほとんど減らないように仕組まれている。それでも自転車操業がうまくいっているうちはいい。でも、ひとたび躓くと、ヤミ金に落ちていく。そうなったら地獄が待っている。

「借金する人が悪い」「借金は返すのが当然」と、正論のようにいう人がいるが、それは違う。借金は返すのが当然だが、利息は返すものではない。払うものである。その利息が利息制限法を違反して高利なのが問題なのだ。法律に違反した本来払うべき必要のない利息まで払わされているのだ。いわゆるグレーゾーンという部分だが、昨年末、貸金業規制法が改正されてグレーゾーンの廃止が決まった。しかし改正法の施行は2009年12月ごろだといわれている。現在もグレーゾーンは生きているのである。
過払い金返還請求といって、払いすぎた利息を裁判で取り返している人もいるが、多重債務者230万人のなかでは一握りだろう。

いつ、歯車が狂うのかわからない。いつ、多重債務者になるかわからない。他人事では片づけられない深刻な問題である。

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やる気

どうしたら、やる気がでるのだろう。
いい年をして、子どもみたいに、イジイジと悩んでいる。

やる気を出すために、ハンバーグを食べた。
チョコアイスを食べた。
ホットコーヒーを飲んだ。

それでも、やる気は出てこない。

スイカを食べた。

お腹がいっぱいになって眠くなった。

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